建設業の標識と帳簿
許可を取ったあとに備えるもの

建設業許可を取ったあと、事務所と現場に備えておかなければならないものが2つあります。

標識(許可票)帳簿です。

どちらも建設業法で義務づけられていて、怠ると10万円以下の過料の対象になります。許可の要件や届出の話に比べて目立ちませんが、立入検査で見られる項目です。この記事で整理します。

標識(許可票)の掲示義務

根拠は建設業法第40条です

「建設業者は、その店舗及び建設工事(発注者から直接請け負つたものに限る。)の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令の定めるところにより、許可を受けた別表第一の下欄の区分による建設業の名称、一般建設業又は特定建設業の別その他国土交通省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。」

ポイントは2つです。

  • 店舗にも、現場にも必要です
  • 現場は元請(発注者から直接請け負ったもの)に限られます。下請として入る現場に、自社の標識は不要です

店舗と現場で、記載事項が違います

建設業法施行規則第25条第1項です。

記載事項 店舗 現場
一般建設業又は特定建設業の別
許可年月日、許可番号及び許可を受けた建設業
商号又は名称
代表者の氏名
主任技術者又は監理技術者の氏名

現場用だけ、技術者の氏名が加わります。店舗用の標識をそのまま現場に持っていっても足りません。

様式と大きさ

同条第2項により、店舗は様式第28号、現場は様式第29号によることとされています。

兵庫県の手引き30ページに、実物の様式が載っています。寸法はこうです。

様式 大きさ
店舗に掲げる標識 様式第28号 35cm以上×横40cm以上
建設工事の現場に掲げる標識 様式第29号 25cm以上×横35cm以上

店舗用と現場用で大きさが違います。寸法は改正されたことがありますので、作成前に必ず最新の様式でご確認ください。

記載のしかたで迷いやすいところ

兵庫県の手引き(様式第29号の記載要領)から、実務上つまずきやすい点を挙げます。

  • 監理技術者を置く場合は、「主任技術者の氏名」を「監理技術者の氏名」に書き換えて、その氏名を記載します
  • 「専任の有無」欄は、専任が必要な工事のときに「専任」と記載します。監理技術者を補佐する者を配置している場合は「非専任(監理技術者を補佐する者を配置)」と記載します
  • 「許可を受けた建設業」欄には、その現場で行っている工事に係る許可を記載します。持っている許可を全部書くのではありません

許可を持っていない業者の表示にも規制があります

建設業法第40条の2です。

「建設業を営む者は、当該建設業について、第三条第一項の許可を受けていないのに、その許可を受けた建設業者であると明らかに誤認されるおそれのある表示をしてはならない。

許可を取る前に、それらしい許可票を掲げることはできません。

帳簿の備付け・保存義務

根拠は建設業法第40条の3です

「建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所ごとに、その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。

「営業所ごと」です。本店でまとめて1冊、ではありません。

帳簿に書くこと

建設業法施行規則第26条第1項です。長いので、要点を整理します。

区分 記載事項
営業所について 営業所の代表者の氏名/その者が代表者となった年月日
請け負った工事について 工事の名称と工事現場の所在地/契約を締結した年月日/注文者の商号・名称・氏名と住所/注文者が建設業者のときはその許可番号/完成検査が完了した年月日/目的物を引き渡した年月日
住宅を新築する工事について 住宅の床面積/建設瑕疵負担割合/住宅瑕疵担保責任保険法人の名称(該当する場合)
下請契約について 下請負人に請け負わせた工事の名称と現場の所在地/下請契約を締結した年月日/下請負人の商号・名称と住所/下請負人が建設業者のときはその許可番号/検査を完了した年月日/引渡しを受けた年月日
特定建設業者が一定の下請契約をしたとき 支払った下請代金の額・支払年月日・支払手段/手形を交付したときは金額・交付年月日・満期/一部支払のときは残額/遅延利息を支払ったときはその額と年月日

添付する書類

同条第2項により、帳簿には次の書類(またはその写し)を添付します。

  • 建設業法第19条第1項・第2項の規定による書面(請負契約書など
  • 特定建設業者が一定の下請契約をしたときは、下請代金の支払を証する書面
  • 施工体制台帳を作成しなければならないときは、そのうち技術者・下請負人に関する部分

いつ書くか

規則第27条です。

「請け負つた建設工事ごとに、それぞれの事項又は書類に係る事実が生じ、又は明らかになつたときに、遅滞なく、当該事項又は書類について行わなければならない。」

年度末にまとめて、ではありません。そのつど書きます。記載事項に変更があったときも、変更があった年月日を付記して、遅滞なく書き直します(同条第2項)。

保存期間は5年、住宅の新築は10年

規則第28条第1項です。

「保存期間は、請け負つた建設工事ごとに、当該建設工事の目的物の引渡しをしたとき(当該建設工事について注文者と締結した請負契約に基づく債権債務が消滅した場合にあつては、当該債権債務の消滅したとき)から五年間(発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものにあつては、十年間)とする。」

起算点は「引渡し」です。契約日でも、決算日でもありません。

「図書」は10年です

帳簿とは別に、図書の保存義務があります。規則第26条第5項の図書について、規則第28条第2項はこう定めています。

「保存期間は、請け負つた建設工事ごとに、当該建設工事の目的物の引渡しをしたときから十年間とする。」

対象となる図書は、立場によって変わります。

立場 保存する図書
発注者から直接請け負った建設業者(作成建設業者を除く) 完成図/発注者との打合せ記録/材料費等記載見積書/その見積書の内容に関する打合せ記録
作成建設業者(施工体制台帳を作成する建設業者) 上記に施工体系図を加えたもの
それ以外の建設業者 材料費等記載見積書/その見積書の内容に関する打合せ記録

帳簿は5年、図書は10年。期間が違います。

電子でも構いません

規則第26条第6項により、記載事項が電子計算機のファイルや電磁的記録媒体に記録され、必要に応じてその営業所で画面や紙に明確に表示できるときは、その記録をもって帳簿への記載に代えることができます。

添付書類についても、スキャナにより読み取る方法その他これに類する方法による記録が認められています(同条第7項)。図書も同様です(同条第8項)。

ただし条件は「必要に応じ当該営業所において……明確に紙面又は出力装置の映像面に表示される」ことです。データがあるだけでは足りず、その営業所ですぐ出せる状態にしておく必要があります。

罰則はどちらも10万円以下の過料

建設業法第55条です。

「次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の過料に処する。
三 第四十条の規定による標識を掲げない者
四 第四十条の二の規定に違反した者
五 第四十条の三の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿若しくは図書を保存しなかつた者

金額としては大きくありませんが、建設業法違反であることに変わりはありません。指導や監督処分の端緒になることもあります。

まとめ

標識 帳簿
根拠 法第40条、規則第25条 法第40条の3、規則第26〜28条
どこに 店舗+元請の現場ごと 営業所ごと
いつ 常時掲示 事実が生じたら遅滞なく
期間 帳簿5年(住宅新築は10年)/図書10年、いずれも引渡しから
罰則 10万円以下の過料(法第55条)

許可を取ったあとの義務は、変更届業種追加だけではありません。日々の掲示と記録も、建設業法上の義務です。

出典

e-Gov法令検索「建設業法」(第40条、第40条の2、第40条の3、第55条)
e-Gov法令検索「建設業法施行規則」(第25条、第26条、第27条、第28条)
兵庫県「建設業許可申請等の手引(令和8年3月)」30ページ

※本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。法令や様式は改正される場合がありますので、実際のご対応にあたっては最新の情報をご確認ください。

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