「特定技能で働いている外国人が、別の会社に転職することはできますか?」
「特定技能外国人を他社から採用したいのですが、すぐに働いてもらえますか?」
「技能実習のように転籍に制限があるのでしょうか?」
結論からいうと、特定技能外国人は転職することができます。
ただし、一般の日本人労働者の転職とは異なり、転職先の会社で働くためには、原則として在留資格「特定技能」の在留資格変更許可申請が必要です。また、転職先で従事する業務が現在と同じ分野であれば必ず転職できる、というわけでもありません。
この記事では、2026年8月現在の制度をもとに、企業の方にもわかりやすく解説します。
1.特定技能外国人は転職できる?
特定技能外国人は、転職することが可能です。
技能実習制度では、原則として実習先を自由に変更することができず、転籍には一定の制限がありました。一方、特定技能制度では、一定の要件を満たせば、現在の会社を退職して別の会社で特定技能外国人として働くことができます。
ただし、ここで重要なのは——
「転職できる」=「手続きなしですぐに新しい会社で働ける」ではない
ということです。特定技能外国人が転職によって受入れ機関を変更する場合、原則として在留資格変更許可申請が必要になります。
2.「転籍」と「転職」はどう違う?
特定技能について調べていると「転籍」という言葉を目にすることがあります。一般的には、
- 転職……勤務する会社を変えること
- 転籍……現在の雇用関係を終了し、別の受入れ機関へ移ること
という意味で使われます。特定技能の場合、実務上は「受入れ機関の変更」や「転職」という表現で説明することが多いです。
特に、技能実習や、2027年(令和9年)4月1日から始まる育成就労制度の「転籍」と混同しないことが重要です。2026年8月現在、育成就労制度はまだ施行されていません。現在の特定技能外国人については、まず特定技能制度の転職ルールを確認する必要があります。
育成就労制度については「育成就労制度とは?技能実習との違いを解説」で解説しています。
3.転職するときは在留資格変更許可申請が必要
A社で特定技能1号として働いている外国人が、B社で特定技能1号として働く場合を考えてみましょう。
この場合、単純にA社を退職してB社と雇用契約を結べばよいわけではありません。B社で特定技能外国人として働くために、在留資格変更許可申請が必要になります。
特定技能の在留資格では、受入れ機関や特定産業分野が重要な要素となっているためです。指定書に記載された特定技能所属機関を変更する場合には、在留資格変更許可を受ける必要があります。
4.申請中に新しい会社で働いてもいい?
ここは非常に重要なポイントです。
在留資格変更許可申請をしているだけでは、転職先で特定技能として働くことはできません。
流れは次のようになります。
- ① 現在の会社を退職
- ② 新しい会社と雇用契約を締結
- ③ 在留資格変更許可申請
- ④ 許可
- ⑤ 新しい会社で特定技能として就労開始
「もう雇用契約を結んだのだから働いてもらおう」——これは避けてください。許可を受ける前に転職先で就労させることは認められません。
5.同じ分野なら自由に転職できる?
ここも誤解されやすいところです。
「建設分野だから、別の建設会社ならどこでも転職できる」という単純な話ではありません。
特定技能では、分野によってさらに「業務区分」が設けられている場合があります。同じ分野内であっても、従事する業務によって必要となる技能が異なるためです。
そのため、転職先で行う業務について、本人が必要な技能を有していることが確認できなければ、転職が認められない場合があります。同一の業務区分内での転職か、技能水準の共通性が確認されている業務区分間での転職かが問題になります。
転職先を決める前に、次の点を確認しておく必要があります。
- 現在の特定産業分野
- 現在の業務区分
- 転職先の特定産業分野
- 転職先で行う業務
- 必要な技能試験等
6.分野そのものを変更する転職は?
現在の分野から別の分野へ変更することも、一定の要件を満たせば可能です。たとえば外食分野から宿泊分野へ、といったケースです。
ただし、特定技能1号を持っているからといって、どの分野でも働けるわけではありません。転職先の分野で求められる要件を満たしている必要があります。
分野を変更する場合も、在留資格変更許可申請が必要です。
7.転職先の会社にも要件があります
確認が必要なのは、外国人本人だけではありません。転職先となる会社も、特定技能所属機関として必要な基準を満たす必要があります。
- 適正な雇用契約を締結していること
- 日本人と同等以上の報酬を支払うこと
- 労働関係法令を遵守していること
- 必要な支援を適切に行うこと
- 分野ごとの受入れ要件(協議会への加入など)を満たしていること
建設分野の体制については「特定技能(建設)の受入れ企業が整える体制」で解説しています。
8.給与は日本人と同等以上が必要です
特定技能外国人の報酬は、同じ業務に従事する日本人と同等以上であることが求められます。
「外国人だから給与を安くする」という扱いは認められません。転職先の企業は、雇用契約書や雇用条件書を準備し、適切な労働条件を設定する必要があります。
9.本人の届出は「14日以内」です
転職に伴う届出もあります。入管法第19条の16に基づく所属(契約)機関に関する届出です。
契約機関との契約が終了したときや、新しい契約機関と契約を締結したときは、その事由が生じた日から14日以内に届け出ることとされています。
たとえば「8月20日にA社を退職」「8月25日にB社と雇用契約を締結」という場合、それぞれの事実について届出の要否を確認することになります。
なお、在留資格変更許可を受けた場合には、転職に係る所属機関の届出が不要となるケースがあります。届出の要否は個別にご確認ください。
10.受入れ企業側にも届出があります
届出が関係するのは、転職する本人だけではありません。これまで雇用していた会社、新しく受け入れる会社にも届出があります。
- 特定技能雇用契約が終了した
- 新たな特定技能雇用契約を締結した
- 雇用契約を変更した
- 受入れが困難となった
これらの場合に、所定の届出が必要となります。原則として届出事由が発生した日から14日以内が期限です。
「退職したから会社側の手続きは終わり」ではありません。本人と受入れ企業の双方について、届出と申請を整理する必要があります。
11.転職手続きの流れ
| やること | |
|---|---|
| STEP1 | 転職先を探す(受け入れられる会社かを確認) |
| STEP2 | 業務内容を確認する(分野・業務区分) |
| STEP3 | 転職先と雇用契約を締結する |
| STEP4 | 在留資格変更許可申請 |
| STEP5 | 許可後、新しい会社で勤務開始 |
| STEP6 | 必要な届出を行う(本人・企業それぞれ) |
12.特に注意したい3つのケース
① 在留期限が迫っている
「転職先が決まってから申請すればいい」と考えていると、手続きが間に合わなくなることがあります。在留期限だけでなく、転職先の決定時期・雇用契約の締結時期・申請の時期・現在の会社の退職時期を、まとめて管理することが大切です。
② 先に退職してしまう
転職先が決まっていない状態で先に退職すると、その後の在留管理に注意が必要になります。特定技能1号は通算在留期間が5年以内という制限がありますので、転職活動に時間がかかると、その分だけ管理が難しくなります。
③ 「同じ分野だから大丈夫」と思っている
同じ特定産業分野でも、業務区分や必要な技能が問題になる場合があります。「同じ分野かどうか」だけでなく、「具体的にどの業務をするのか」まで確認することが大切です。
13.採用する企業が確認しておきたいこと
他社で働いている特定技能外国人を採用する場合、少なくとも次の点を確認しておかれることをおすすめします。
- 現在の在留資格/在留カードの有効期限
- 指定書の内容
- 現在の特定産業分野/業務区分
- 転職後の業務内容
- 技能試験等の合格状況
- 雇用契約の内容/給与水準
- 受入れ企業としての要件/1号の場合の支援体制
- 分野ごとの追加要件
- 在留資格変更許可申請の必要書類
- 退職・入社に伴う届出
採用を決めてから「実はその業務では働けない」と判明するケースには特に注意が必要です。在留カードだけでなく、指定書やこれまでの在留資格関係書類まで確認しておくことが重要です。
14.まとめ
特定技能外国人は、技能実習制度と違って、一定の要件を満たせば転職することができます。ただし「自由に転職できる」という意味ではありません。
- ① 転職は可能……一定の要件を満たせば別の会社へ移れます
- ② 受入れ機関が変わる場合は在留資格変更許可申請が必要……許可前に転職先で働くことはできません
- ③ 同じ分野でも業務区分を確認する……必要な技能を有しているかが問われます
- ④ 届出は14日以内……本人・前の会社・新しい会社それぞれにあります
特定技能外国人の転職・採用は、「採用してから考える」のではなく、採用前の確認が重要です。「この人なら働いてもらえそう」というだけで進めてしまうと、後から在留資格上の問題が生じることがあります。
現在の在留資格、指定書、分野、業務区分、技能要件、転職先企業の受入れ要件を、採用前にご確認ください。
出典
出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」」
同「所属(契約)機関に関する届出」
同「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」
同「特定技能制度に関するQ&A」
※本記事は2026年8月時点の情報に基づく一般的な情報提供です。分野ごとの取扱いや個別のご事情により結論が異なる場合がありますので、実際のお手続きにあたっては最新の情報をご確認いただくか、ご相談ください。
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