ペットの世話や親族の介護などを条件に財産を渡したいとき、「負担付き遺贈」と「負担付き死因贈与」という2つの方法があります。よく似ていますが、法的な性質が異なります。この記事では両者の違いを整理します。
どちらも「見返り」を条件に財産を渡す方法
まず共通点です。どちらも、財産を受け取る人に一定の義務(負担)を負わせる点は同じです。
「〇〇してくれるなら財産をあげる」——たとえば「預金を渡すので、代わりに私のペットの世話をしてください」という形で、どちらも同じ働きをします。違いはその約束の「成立の仕方」にあります。
最大の違いは「相手の合意が要るかどうか」
負担付き遺贈は「一方的」
遺贈は遺言によって行うため、財産を渡す人(遺言者)が一人で決められます。相手の同意は不要で、遺言書に書くだけで成立します。
その代わり、受け取る側は放棄できます。「そんな負担は嫌だ」と思えば、遺贈自体を断ることができます。
負担付き死因贈与は「契約」
死因贈与は贈与者と受贈者の合意(契約)によって成立します。「私が死んだらこれを渡す」「わかりました、代わりに世話をします」という双方の約束です。
契約なので、原則として受贈者が一方的に放棄することはできません。相手に確実に引き受けてもらいたい場合に向いています。
比較表
| 負担付き遺贈 | 負担付き死因贈与 | |
|---|---|---|
| 成立方法 | 遺言(単独行為) | 契約(双方の合意) |
| 相手の同意 | 不要 | 必要 |
| 方式 | 遺言の要件を満たす必要あり | 書面でなくても成立(※書面を推奨) |
| 相手の放棄 | できる | 原則できない |
| 撤回 | いつでも可能 | 原則可能だが制限あり |
それぞれのメリット・デメリット
負担付き遺贈
- メリット:相手に知られず一人で準備できる。いつでも撤回・変更できる
- デメリット:放棄されるとペットの行き先が決まらなくなる
負担付き死因贈与
- メリット:相手の合意があるので、確実に引き受けてもらいやすい
- デメリット:生前に相手と話し合う必要がある。相手が先に亡くなると効力を生じない
ペットの世話を託す場合はどちらがよい?
「確実に引き受けてほしい」ならば死因贈与が向いています。生前に世話をしてくれる人と話し合い、合意のうえで契約しておけば、放棄される心配が少なくなります。
一方、まだ相手を決めきれない、こっそり準備したい場合は遺贈が向いています。
どちらの方法でも、世話にかかる費用(エサ代・医療費など)も一緒に渡すことで、引き受ける人の負担を軽くできます。
負担が実行されない場合はどうなる?
いずれの場合も、財産だけ受け取って約束(世話)を実行しないリスクがあります。その場合、相続人などが「負担を実行してほしい」と請求でき、それでも履行されなければ、家庭裁判所への請求により遺贈・贈与の取り消しが認められることがあります。
ただし、取り消しには手続きの手間がかかるため、信頼できる相手を選ぶことが何より重要です。
まとめ
負担付き遺贈は「遺言による一方的な方法(相手は放棄できる)」、負担付き死因贈与は「契約による方法(相手の合意が必要で放棄しにくい)」という違いがあります。ペットの世話を確実に託したい場合は死因贈与、柔軟に準備したい場合は遺贈が向いています。ご自身の状況に合わせて選ぶことが大切です。
ペットの世話を託す方法には、このほかにも「飼育委託契約」や「ペット信託」があります。あわせてご覧ください。
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