医療法人の届出のなかで、決算届と並んで必ず発生するのが役員変更届です。
「役員は何年も同じだから、うちには関係ない」——そう思われがちですが、そうではありません。メンバーが変わらなくても、2年ごとに手続きが必要になります。
この記事では、その理由と、見落とされやすい点を整理します。
役員の任期は2年を超えられません
医療法第46条の5第9項にこう定められています。
「役員の任期は、二年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。」
ここが出発点です。任期の上限が2年である以上、2年ごとに必ず改選の時期が来ます。
同じ方が続けて務める場合(重任)でも、いったん任期が満了し、あらためて選任されることになります。「変わっていないから何もしなくていい」わけではありません。
届出は「遅滞なく」です
根拠は医療法施行令第5条の13です。
「医療法人は、その役員に変更があつたときは、新たに就任した役員の就任承諾書及び履歴書を添付して、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない」
特徴的なのは、添付書類が条文に書かれていることです。
- 就任承諾書
- 履歴書
いずれも新たに就任した役員のものです。決算届のように「〇か月以内」という期限ではなく、「遅滞なく」とされている点にご注意ください。
役員は何人必要か
医療法第46条の5第1項です。
「医療法人には、役員として、理事三人以上及び監事一人以上を置かなければならない。ただし、理事について、都道府県知事の認可を受けた場合は、一人又は二人の理事を置けば足りる。」
選任の方法も決まっています。
- 社団たる医療法人の役員……社員総会の決議によって選任(同条第2項)
- 財団たる医療法人の役員……評議員会の決議によって選任(同条第3項)
つまり、役員を決めるには総会や評議員会の開催が必要です。議事録も残すことになります。手続きは届出だけで完結しません。
見落とされやすい3つのこと
① 管理者を退いた理事は、理事の職も失います
これが最も見落とされやすい点です。
医療法第46条の5第6項は、まず次のように定めています。
「医療法人は、その開設する全ての病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(指定管理者として管理する病院等を含む。)の管理者を理事に加えなければならない。」
そのうえで同条第7項が、こう定めています。
「前項本文の理事は、管理者の職を退いたときは、理事の職を失うものとする。」
院長(管理者)が交代すると、その方は自動的に理事でもなくなります。「理事は辞めていないつもりだった」という認識でいると、届出が漏れます。
分院の管理者を交代したときも同じです。管理者の交代=役員の変更だと考えておくのが安全です。
なお、2以上の病院等を開設する医療法人が都道府県知事の認可を受けたときは、管理者の一部を理事に加えないことができるとされています。
② 監事は理事や職員を兼ねられません
医療法第46条の5第8項です。
「監事は、当該医療法人の理事又は職員を兼ねてはならない。」
身内で役員を固めようとすると、ここに引っかかります。事務長を監事にする、といった構成は認められません。
③ 5分の1を超えて欠けたら1か月以内に補充
医療法第46条の5の4です。
「理事又は監事のうち、その定数の五分の一を超える者が欠けたときは、一月以内に補充しなければならない。」
役員が急に退任・死亡された場合、この期限が動き出します。
なお、員数が欠けた場合について、通知はこうも定めています。
「法又は定款若しくは寄附行為で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有すること。」
辞めたつもりでも、後任が決まるまでは責任が残るということになります。
登記は司法書士の業務です
役員の変更にともなって登記が必要になる場合があります。
法務局への登記申請は司法書士の業務です。行政書士がお引き受けできるのは、都道府県への届出と、その添付書類の準備までになります。
登記をしたときは、登記事項及び登記の年月日を遅滞なく都道府県知事に届け出ることとされています(医療法施行令第5条の12)。登記の届出も別に必要です。
2年ごとの流れ
| やること | |
|---|---|
| ① | 任期満了の時期を確認する(2年を超えない) |
| ② | 社員総会または評議員会を開催し、役員を選任する |
| ③ | 議事録を作成する |
| ④ | 就任承諾書・履歴書を用意する |
| ⑤ | 役員変更届を都道府県知事へ提出(遅滞なく) |
| ⑥ | 登記が必要な場合は司法書士へ。完了後に登記事項届 |
まとめ
- 役員の任期は2年を超えられない(法第46条の5第9項)ため、2年ごとに手続きが発生する
- 同じ方が続ける(重任)場合も、選任と届出の手続きが必要
- 届出は遅滞なく。就任承諾書と履歴書を添付(施行令第5条の13)
- 理事3人以上・監事1人以上(同条第1項。知事の認可があれば理事1〜2人も可)
- 管理者を退いた理事は理事の職を失う(同条第7項)——届出漏れが起きやすい
- 監事は理事・職員を兼ねられない(同条第8項)
- 定数の5分の1を超えて欠けたら1か月以内に補充(法第46条の5の4)
医療法人の届出の全体像は「医療法人の行政手続きとは?毎年必要な届出を整理します」で解説しています。手続きの内容や料金は「医療法人の行政手続き」のページをご覧ください。
出典
厚生労働省「医療法人の機関について」(医政発0325第3号)
厚生労働省「医療法施行令」
厚生労働省「医療法」
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。役員の任期や員数は定款・寄附行為の定めによる部分もあり、様式や添付書類の取扱いは都道府県によって異なる場合があります。実際のお手続きにあたっては、定款の定めと所管の窓口の最新の案内をご確認ください。
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