経営情報等報告とは?
決算届との違いを解説

「決算届は毎年出しているけれど、経営情報等報告というのは何だろう」

比較的新しい制度なので、まだご存じない医療法人もあります。決算届を出していれば足りる、というものではありません。別に報告が必要です。

この記事では、経営情報等報告とは何か、決算届と何が違うのかを整理します。

経営情報等報告とは

根拠は医療法第69条の2第2項です。条文はこうなっています。

「医療法人(厚生労働省令で定める者を除く。)は、厚生労働省令で定めるところにより、当該医療法人が開設する病院又は診療所ごとに、その収益及び費用その他の厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に報告しなければならない

令和5年法律第31号による医療法改正で設けられた制度で、令和5年8月1日から施行されています。報告先は主たる事務所の所在地の都道府県知事です。

「四段階税制」を使っている場合は報告対象外です

ここは見落とされやすい点です。

厚生労働省の通知(医政発0731第2号)は、原則としてすべての医療法人が対象としたうえで、次の例外を示しています。

「ただし、医療法人が、当該報告に係る会計年度における法人税の申告において租税特別措置法第67条第1項の規定による社会保険診療報酬の所得計算の特例を適用して所得の金額を計算した場合(いわゆる『四段階税制』を適用した場合)には、当該会計年度に係る報告の対象外となることに留意すること」

四段階税制を適用した会計年度は、経営情報等の報告が不要ということになります。

なお、この場合は何もしないのではなく、通知では都道府県知事が様式3によりその旨の報告を求めるなどの方法により把握するとされています。所管の窓口の案内をご確認ください。

ここでいう四段階税制を適用するかどうかは税務上の判断であり、税理士の業務です。当事務所がお答えできるのは、「適用した場合に医療法上の報告義務がどうなるか」という部分に限られます。

実務としては、顧問税理士に「その会計年度の申告で四段階税制を適用したかどうか」を確認していただくところから始めるのが確実です。

決算届との違いは「単位」です

ここが最も大事な点です。厚生労働省のリーフレットでは、2つがこう説明されています。

決算届(事業報告書等) 経営情報等報告
単位 法人単位 病院・診療所ごと
内容 法人単位の活動状況等 収益及び費用など
期限 毎会計年度終了後3か月以内 毎会計年度終了後3か月以内
法第51条第5項により公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならない医療法人は4か月以内
根拠 医療法第52条 医療法第69条の2

リーフレットの表現をそのまま引くと、次のとおりです。

「事業報告書等:毎会計年度終了後3か月以内に届け出ていただく、法人単位の活動状況等」

「経営情報等:毎会計年度終了後3か月以内(外部監査の対象となる医療法人は4か月以内)にご報告いただく、病院・診療所単位での『収益及び費用』や『職員の職種別人数及びその給与総額(任意項目)』」

つまり、複数の診療所を持つ医療法人は、施設ごとに報告することになります。決算届のように法人でひとまとめ、ではありません。

「決算届を出したから大丈夫」ではありません

厚生労働省のリーフレットには、まさにこの質問と回答が載っています。

Q.事業報告書等を届け出ましたが、経営情報等も報告しなければいけないのでしょうか?

A.必要です。法人単位の事業報告書等に加えて、病院や診療所ごとの経営情報等も報告が義務化されています。

わざわざFAQに載っているということは、それだけ混同されやすいということでもあります。

報告する内容

  • 病院・診療所ごとの収益及び費用
  • 職員の職種別人数及びその給与総額任意項目

職種別の人数と給与総額は任意項目とされています。必須ではありませんが、報告が求められている情報です。

報告の方法は3通りあります

通知では、報告の方法が次の3つとされています。

  • 医療法人がMCDBから様式をダウンロードし、記入したうえでMCDBにアップロードする方法
  • 医療法人がMCDBのWeb画面上の様式に直接情報を入力する方法
  • ①②の方法による提出が難しい場合、事業報告書等の届出と併せて、様式を郵送等により書面で提出する方法

「パソコンが苦手だから無理」ということはありません。書面でも提出できます。

様式は施設の種類で分かれており、病院は様式1、診療所は様式2です。

MCDBを使うと負担が減ります

厚生労働省は、MCDBを利用する利点として次の点を挙げています。

  • 前年度に登録した情報の自動入力
  • 入力内容の自動チェック機能

これらにより「作業負担の軽減に繋がります」とされています。

システムで報告する場合は、事前にMCDBの利用申請が必要です。初めての年は、申請の時間も見込んでおく必要があります。

期限を過ぎてしまったら

こちらもFAQに載っています。

Q.報告期限が過ぎている場合、報告は不要となりますか?

A.必要です。事業報告書等及び経営情報等の報告期限が過ぎていても都道府県へご報告ください。

期限を過ぎたからといって、報告しなくてよくなるわけではありません。気づいた時点で提出することになります。

報告した情報は何に使われるのか

医療法第69条の2第1項は、都道府県知事の役割をこう定めています。

「都道府県知事は、地域において必要とされる医療を確保するため、当該都道府県の区域内に主たる事務所を有する医療法人の活動の状況その他の厚生労働省令で定める事項について、調査及び分析を行い、その内容を公表するよう努めるものとする」

そして厚生労働省は、報告データの活用について次のように説明しています。

「医療の現状と実態を把握するための非常に重要な情報として、診療報酬改定や医療機関への補助金等の必要な施策の検討に活用しています」

単なる事務手続きではなく、診療報酬や補助金の議論の土台になる情報だということになります。

個々の法人の情報が公表されるわけではありません

「公表」と聞くと、自院の収益が世間に出るのかと心配になるかもしれません。そうではありません。通知にはこう明記されています。

「経営情報等には、医療法人や当該医療法人に所属する特定の個人の権利利益や法人の競争上の利益が害されるおそれがある情報が含まれており……当該情報の秘密は保護する必要があり、個人や法人を特定することができる内容を公にすることを前提として収集するものではない

都道府県が公表に努めるのは分析した内容であって、個々の医療法人の経営情報そのものではありません。都道府県には、情報の漏えい・滅失・毀損の防止など、安全管理のために必要かつ適切な措置を講ずることも求められています。

準備しておきたいこと

  • MCDBの利用申請を先に済ませておく(初年度は特に)
  • 複数の施設がある場合、施設ごとに収益・費用を分けられる形にしておく
  • 決算届と同じ時期に来るので、まとめて準備する
  • 外部監査を受けている場合は4か月以内であることを確認しておく

記載方法については、厚生労働省が『「医療法人に関する情報の調査及び分析等」の取扱い』を公表しています。所管の都道府県の案内とあわせてご確認ください。

まとめ

  • 経営情報等報告は医療法第69条の2第2項に基づく報告義務
  • 決算届が法人単位なのに対し、経営情報等は病院・診療所ごと
  • 決算届を出しても、別に報告が必要
  • 期限は毎会計年度終了後3か月以内(外部監査の対象法人は4か月以内
  • 報告はMCDBによるオンライン報告が推進されている。事前の利用申請が必要
  • 期限を過ぎても報告は必要
  • 四段階税制を適用した会計年度は報告の対象外
  • MCDBが難しい場合は書面での提出も可能

医療法人の届出の全体像は「医療法人の行政手続きとは?毎年必要な届出を整理します」で解説しています。手続きの内容や料金は「医療法人の行政手続き」のページをご覧ください。

出典

厚生労働省「医療法人に関する情報の調査及び分析等について
厚生労働省「医療法人のみなさま(リーフレット)
厚生労働省「医療法人に関する情報の調査及び分析等について」(医政発0731第2号 令和5年7月31日/最終改正 医政発0331第83号 令和7年3月31日)
厚生労働省「医療法

※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。報告事項や様式は厚生労働省令で定められており、改正される場合があります。また、具体的な取扱いは都道府県によって異なる場合がありますので、実際のお手続きにあたっては所管の窓口の最新の案内をご確認ください。

※租税特別措置法第67条第1項の適用の可否など税務に関する事項は税理士の業務です。本記事は、これを適用した場合に医療法上の報告義務がどうなるかを説明するものであり、税務上の判断については顧問税理士にご確認ください。

Shoko行政書士事務所では、医療法人の行政手続きに関するご相談をお受けしています。兵庫県宝塚市を拠点とし、京都府京都市・大阪府大阪市を中心にオンライン・訪問にて対応させていただきます。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。

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